出会い系、コミュニティサイトにおける児童被害の実態

出会いアプリやLINE掲示板などの危険性と児童被害の実態。年齢認証手続きが厳しくなり18歳未満の児童が登録・利用できないようになった出会い系サイトに代わり、現在では、出会いチャットアプリやLINE ID交換掲示板などのコミュニティサイトが児童の援助交際・買春被害の温床となっています。

安全性を高める出会い系に比べ危険性が高まるコミュニティサイト

これまで世間的に広く共有されてきた「出会い系=援助交際、児童買春の温床」という認識は、過去のものとなりつつあります。現在では、援助交際や児童買春といった犯罪被害は、出会い系サイトではなく、無料出会いアプリLINE ID交換掲示板などの“ポイント無しの出会い”と呼ばれるコミュニティサイトで発生するケースがとても多くなっているのです。

コミュニティサイト及び出会い系サイトに起因する事犯の被害児童数の推移

コミュニティサイト及び出会い系サイトに起因する事犯の被害児童数の推移

上のグラフを見ても分かる通り、出会い系の利用に起因する児童被害が年々減少し続けているのとは対照的に、コミュニティサイトの利用に起因する児童被害は右肩上がりで発生件数が増え続けています。

出会い系サイトでの児童被害が大きく減少した要因は、登録・利用者の年齢確認手続きの厳格化が出会い系サイト規制法により義務化されたことです。現在の出会い系サイトは、クレジットカード決済や運転免許証などの公的書類の送付・送信などによって18歳未満でないことを証明しないと使うことができない仕組みになっています。

しかし、出会いチャットアプリなどのコミュニティサイトに関しては、出会い系サイトと同じように“異性と出会えてしまう”にもかかわらず、規制法の対象となっていないことから18歳未満の児童でも使えてしまうため、法律で規制される前は出会い系サイトを使っていた児童がコミュニティサイトへと流れ、そこで援交や買春などの被害に遭うケースが増えているのです。

過去において、危険性に満ちていた出会い系サイトが安全な大人同士の出会いの場となりつつあるのに対して、コミュニティサイトの危険性は反対に年々高まっており、規制や対策も思うように進んでいるとは言えない状況なのです。

コミュニティサイトにおける児童被害の大半を占める援交や買春

出会いアプリやLINE ID交換掲示板などのコミュニティサイトの利用に起因する児童の犯罪被害のうち、最も多いのは、不純な性交や買春といったいわゆる“異性間の出会い目的”での利用による被害です。

罪種別の被害児童数及び割合

罪種別の被害児童数及び割合

この統計を見ると一目瞭然なように、不純な性交や買春だけで児童被害の半数以上の割合を占めています。児童ポルノ(裸の写メや動画の送信の強要など)に該当する被害も同じく高い割合となっていますが、いずれにも共通しているのは、コミュニティサイト上で児童とやり取りする男性側が児童を性の対象と見ていることに起因する被害であるということです。

裸の写メや動画の送信の強要についても、事と次第によっては実際に会うに至る場合も十分に想定されるので、潜在的には、児童が援助交際や買春被害に遭う危険性はこの統計結果以上にとても高いということが言えるでしょう。

出会いアプリ、グループチャットアプリでの被害が急増

児童被害の発生件数の内訳をコミュニティサイトの種別ごとに見てみると、以下のグラフの通り、出会いチャットアプリやTwitterなどのグループ系での被害が増え続けている一方、LINEのID・QRコード交換掲示板における被害は、平成26年上半期をピークに大きく減少に転じています。

主なコミュニティサイト種別の被害児童数の推移

主なコミュニティサイト種別の被害児童数の推移

チャット系
面識のない利用者同士がチャットにより交流するサイト、アプリ(「ぎゃるる」などの出会いチャットアプリ)
複数交流系
広く情報発信や同時に複数の友人等と交流する際に利用されるサイト、アプリ(Twitterなど)
ID・QRコード交換系
LINE、カカオトーク、スカイプ等のID等を交換することにより交流するサイト、アプリ(LINE ID交換掲示板)
ブログ・掲示板系
趣味やカテゴリー別のコメント、日記等を掲載し、それを閲覧した利用者と交流するサイト、アプリ
ランダムマッチング系
ランダムに他の利用者と結び付き、その利用者と交流するサイト、アプリ
ゲーム・アバター系
主にゲーム等のキャラクターやアバターとして他の利用者と交流するサイト、アプリ

ID・QRコード交換の掲示板における児童被害の件数が減少しているのは、LINEがIDを掲示板などに投稿・公開することを禁止し、18歳未満のLINEユーザーのIDを検索できないように規制をかけたことが大きな要因です。

反対に、出会いチャットアプリや Twitter などのグループ系での被害件数が増えていることから、援助交際や買春などの児童被害の主たる温床は、チャット系の出会いアプリとなっている実態が浮かび上がってきます。

最新の統計でも、Twitter を筆頭に ぎゃるる、LINE の順に児童被害が多数発生しています。

交流サイト、少女ら被害最多=昨年1736人、4年連続増-ツイッター突出・警察庁

時事ドットコム(2017年4月20日)

被害が多いサイトは、ツイッターが前年比220人増の446人で最多。チャット型アプリ「ぎゃるる」が67人減の136人、無料通信アプリ「LINE」が9人増の124人と続いた。

※引用元

児童でも異性と出会えてしまうコミュニティサイトの問題

チャット系の出会いアプリを中心にコミュニティサイトにおける児童被害が増加している最大の要因は、児童でも異性と出会えてしまう機能を有していることに尽きます。

裏を返せば、出会いアプリなどのコミュニティサイトに関しても、18歳未満の児童は決して異性とは出会えないように何らかの規制をかけることで児童被害を減らすことは十分可能であるということです。それは、法規制によって出会い系サイトでの援助交際のや児童買春被害が大幅に減少したことを見ても明らかです。

コミュニティサイトに起因する事犯の被害児童が被疑者と会った理由

コミュニティサイトに起因する事犯の被害児童が被疑者と会った理由

コミュニティサイトの利用を通じて被害に遭った児童の、相手と出会った理由の内訳を見ても、異性との出会い(上記グラフ中の「交友目的」「金品目的」「性的関係目的」「相手が好みだった」が該当)に分類できる被害件数は、合計で446人(件)と全体の6割以上を占めていることから、児童の自制や出会いアプリの自主規制に任せるだけでは児童被害を防ぐことが難しいのは明白です。

これらの統計データは、増え続けるコミュニティサイトにおける児童被害を防ぐには、より厳しい対策や法律による規制が必要であることを強く示唆していると言えるでしょう。

加害者にならないためにもより安全な出会い系を使うことが大切

コミュニティサイトの利用を通じて発生する児童買春などの被害を防ぐためには、出会いアプリに対して年齢確認の義務化を法律により規制することや、児童のコミュニティサイト利用におけるフィルタリングの強化などが強く求められますが、それ以外にも成人男性がそれらのコミュニティサイトを異性との出会い目的で使わないことも同時に強く求められます。

出会いチャットアプリやTwitterなどのコミュニティサイトを異性との出会い目的で使ってしまうと、児童を被害に遭わせてしまう“加害者”となる可能性があります。加害者となることは、被害者である児童の人生だけではなく、加害者自らの人生や生活をも大きく狂わせるということでもあります。

児童を性犯罪に巻き込まないためにも、そして自らの身を守るためにも、ネットで出会い探しをする場合は、年齢認証が義務化されて安全性が高まっている優良出会い系を使うようにしましょう。


※記事中で紹介している数値・データ、及びグラフは、警察庁発表の広報資料「平成28年上半期におけるコミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策について」より引用、作成しています。